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第四章. それからの狐たち その後の話をしよう.一美はそれから十年ほど経った春の日に,真琴と結婚した.ジューンブライドではないけれど,二人は満開の桜の中,入学式のような初々しさと華やかさで幸せそうに見えた.一美と真琴の間に生まれた子供の名前を宵子という.そうして,仲間がまた一人増えた. どれほど夢のような世界を,どれほどの冒険を,そしてどれほど愛された日々を物語とともに過ごすだろう.ある日の天野美汐が過去を振り返り,また未来のことをそう思った.これから自分が年をとるうち,遠い昔の日のことを何度でも思い出すだろうし,また幼い日の自分は未来の私に語りかけてくるだろう.いつか相沢さんが言っていたように意味は後からついてきて,あのとき何があったのかということはいつも,振り返ったその瞬間に生まれてくるのだろう.そういうことは人と人の間にもあって,私や相沢さんの物語の意味を私たち自身が考えることは出来なくて,それは後になってから,たとえば真琴が私たちの代わりに考えることになっているのかもしれない.本当にくだらなくて,ただ辛いだけの話もあって,愛しい人たちにそんなことは伝えたくないのに,それはいつの間にか語り継がれていて,私の代わりに考えてもらっているということがあるように思う.だから彼ら,彼女らにはそんなつもりはないのだとしても,私はそのことを真琴たちに,いや,全ての小さいものたちに感謝しなくてはならないように思う. 天野は丘に住む狐たちの暮らしぶりに想いを巡らせた.それは天野自身が誰かから語り継いだ,夢物語かもしれなかった. |
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(了)
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